社員に任せられないのはなぜ?社長がいないと回らない会社の見直し方
売上が伸び、仕事が増えてくると、社員を採用して業務を分担するようになります。
人が増えれば、社長の仕事は少しずつ減り、もっと事業の先を考えられるようになる。
本来は、そうなるはずです。
ところが実際には、社員を増やしたのに、なぜか社長だけが以前より忙しくなっていることがあります。
「少し会社を離れただけで、社員からの確認が何件も届く」
「休みを取ると、見積もりや顧客対応などの業務が止まってしまう」
こうした状態では、社長が事業について考える時間も、安心して休む時間も取りにくくなります。
この状況を改善しようとするとき、社員の能力や意欲にだけ原因を求めることがあります。
しかし、本当にそれだけが原因なのでしょうか。
社長に判断を仰がなくてはいけないような、仕事の進め方になってはいないでしょうか。
社長がいないと回らない会社では、何を見直せばよいのかを考えます。
作業を任せても、判断が社長に残っている
社員が担当している業務が多くても、会社が社長なしで動けるとは限りません。
例えば、
・見積書は社員が作るけれど金額は社長が決める。
・顧客からの依頼は社員が受けるけれど、納期の回答は社長を待つ。
このような仕事の進め方では、判断するのは社長だけなので、社長がいないと回らなくなります。
もちろん、大きな投資や重要な契約など、社長が判断すべきことはあります。
問題は、日常の対応まで同じように社長の確認を必要としていることです。
一つずつは簡単な確認でも、それが重なれば多くの時間を要し、社長は他の重要な仕事に集中できません。
そして、社員は社長の返事がなければ、次に進むことができないのです。
こんなときに社長は社員に対し、こんなことを口にします。
「もっと自分で考えて動いてほしい」
こう言われた社員はどう感じるでしょうか?
具体的に何をどのように考えるのかがわからなければ、考えることもできませんし、動くこともできません。
自分の判断でどこまで決めてよいのか、何を優先すればよいのかがわからなければ、社長に確認するしかないのです。
では、実際に何を見直せばよいのでしょうか。
まず確認したいのは、「社長がいないと、どの仕事が止まるのか」です。
任せられない原因を社員の能力や意欲だけで考えるのではなく、実際の仕事の流れを見ていくと、社長に判断や確認が集中している箇所が見えてきます。
特定の人に業務や判断が集中する状態については、「属人化を組織の力に変える」でも詳しく扱っています。
そこで一度、社長が不在の日に、どの仕事が止まり、どんな確認が社長に集まっているのかを見てみます。
社長が不在の日に止まる仕事は何か
ある会社では、社長が不在になると、見積もりの承認や顧客対応、社内の判断が止まっていました。
社長が終日外出した日に、既存顧客から「いつもと同じ商品を、来週までに追加でお願いしたい」と連絡が入ります。
担当者は在庫を確認でき、通常の価格もわかっています。納期も間に合うことを確認しています。
ただ、確約してよいかわからずに、社長に連絡して判断を仰ぎます。
ここでもし、社長が打ち合わせ中などで返事をできなければ、顧客への回答は保留となったままです。
こうして社長不在時に仕事が止まることになります。
このように、社長がいないと業務が滞る事例があると思います。
そこで、「最近、社長の返事を待って止まった仕事」を三つほど思い出してみてください。
見積もり、納期回答、問い合わせへの返答など、できるだけ具体的な仕事に絞ります。
そして、なぜその仕事が止まったのかをプロセスを追いながら分析してみてください。
必要な情報が足りなかったのか、
担当者に決める権限がなかったのか、
それとも判断するための基準が十分でなかったのか。
上記の例では、担当者に知識がないというより、納期を回答するために確認すべき条件と、回答してよい範囲が共有されていないことが原因でした。
業務が止まる理由が見えてくると、単に「もっと社員に任せよう」と考えるだけでは不十分だということがわかります。
そして、次に考えてほしいのは、誰が、何を、何に基づいて決めるのかを、あらかじめ整理することです。
誰が、何を、何に基づいて決めるか
前章で、社長の返事を待って止まる仕事と、その理由を確認しました。
では、その確認を減らすためには、何を決めておけばよいのでしょうか。
整理したいのは、
「誰が判断するか」
「何を判断してよいか」
「何に基づいて判断するか」
の三つです。
担当者の名前だけを決めても、判断できる範囲や確認すべき情報が曖昧なら、確認は減りません。
先ほどの納期回答なら、「通常の商品で、在庫があり、出荷担当が対応可能と確認できた場合は、営業担当が通常納期を回答する」と決める方法があります。
もし、在庫が不足している場合や特別な対応が必要な場合は責任者に相談する、などの例外対応も合わせて決めます。
これは一例であり、実際の条件は会社の仕事に合わせて設計します。
また、納期を早めるために追加費用が発生するなら、何を優先するかも話し合う必要があります。
顧客からの要望、現場の負担、利益など、複数の条件がぶつかる場面では、一つの基準だけでは決められません。
具体的な案件を使って、社長が何を見て判断しているのかを見える化していきます。
ただ、判断基準を決めても、それだけですぐに社員が迷わず判断できるようになるわけではありません。
実際の仕事の中で使ってみると、想定していなかった条件や、社長と担当者で判断が分かれる場面も出てきたりするものです。
だからこそ、最初から完璧なルールを作ろうとせず、小さく試しながら、なぜその判断をしたのかを振り返る、という作業が必要になります。
小さく試し、判断の理由を振り返る
もちろん、判断の基準を整理したからといって、それだけで任せられるわけではありません。
経験の少ない社員の場合、これまで社長が担っていた判断を一度に任せると、対応の質が下がったり、想定していなかった問題が起きたりする可能性もあります。
そこで、最初は小さなことから任せて試してみます。
条件がわかりやすく、問題が起きても修正しやすい仕事を一つ選びます。
判断に必要な情報を社員が見られるようにし、迷った場合の相談先も決めます。
社長が不在のときに相談できる責任者を決める必要もあります。
そして、試した後は、結果だけでなく、「何を確認し、なぜその対応を選んだか」を短く振り返ります。
社長の考えと違ったときも、すぐに担当を変えたり、能力がないと判断したりせずに、お互いに認識の齟齬のないように、判断基準を丁寧に共有し、必要な情報や説明が足りていたかを確認します。
こうした対話と経験を重ねながら、少しずつ任せる範囲を広げていきます。
ただし、最初から多くの仕事を見直す必要はありません。
まずは、社長への確認が繰り返し発生している仕事を一つ選んでみましょう。
社長への確認を一つ見直すことから
社長がいないと回らない状態を、一気に変えることはほぼ不可能です。
まずは、どんな業務で滞ってしまうのかの洗い出しをする必要があります。
直近の1週間で、社員から受けた確認を一つ思い出してみてください。
「なぜ、この判断は自分のところに来たのだろう」
そう考えてみると、社員の能力ではなく、判断する人や範囲、必要な情報が決まっていないことが原因になっているかも見えてきます。
一つずつ、現場で判断できる仕事を増やしていく。
それが、社長がいなくても仕事が止まらない会社への一歩なのです。